環境を汚染するマイクロプラスチックの脅威とは?

2018年12月31日 ALL生物
Photographed by Oregon state university from https://www.flickr.com/photos/oregonstateuniversity/

最近、マイクロプラスチックという言葉をよく聞きます。環境汚染物質として注目されていますが、プラスチックは難分解性のため、体内に入ったところで排出されるだけじゃないのかと思われている方もいるかもしれません。今回は、マイクロプラスチックとは一体どういうもので、何が問題になっているのかについて書きたいと思います。

マイクロプラスチックとは?

マイクロプラスチックは、通例5mm以下のプラスチック片を指します。子供の頃よく遊んだBB弾が6mmくらいです。マイクロという名がついていますが、意外と大きなプラスチック片もマイクロプラスチックに含まれます。

マイクロプラスチックはどこから自然界に入るのか。

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製造されたときにすでに、5mm以下のプラスチック片であるものは1次マイクロプラスチック、劣化したプラスチック片が砕けてできたものは2次マイクロプラスチックと言われています。
1次マイクロプラスチックは、私達にとって身近なものでは、洗顔用品、歯磨き粉などによくスクラブとして使われています。日本では、多くのスクラブ入りの製品が生分解性プラスチックを使用するようになってきているようです。
2次マイクロプラスチックは、ペットボトルやビニール袋などのプラスチック製品、化学繊維などから離脱した細かいプラスチック片です。自然環境中に放置されたプラスチックが、劣化し、粉々になる場合もありますが、使っている服の繊維から離脱するものもあります。

マイクロプラスチックのゆくえ

皆さんご存知の通り、プラスチックは非常に難分解性であるため、マイクロプラスチックも分解されないまま、海に流れ、どんどん自然環境中に蓄積しています。マイクロプラスチックは、生物の体の中にも入り込みます。魚や海鳥の胃の中からマイクロプラスチックが見つかったということが報告されています。また、9つの国からサンプルされた259個のペットボトル飲料水の93%からマイクロプラスチックがみつかったという研究報告や、21の国と地域から集めた塩の90%にマイクロプラスチックが含まれていたという報告があります。人間の糞便からもマイクロプラスチックが見つかったという研究もあります。これらのことから多くの人間の体の中にも、マイクロプラスチックが入り込んでいると考えられます。

マイクロプラスチックの害は?

牡蠣

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マイクロプラスチックが生物体内で起こす害については大きく2つ考えられています。
1つ目は、マイクロプラスチック自体が物理的に生物の機能に害を与える可能性です。ポリエチレンからできたナノサイズのマイクロプラスチックに暴露した牡蠣の繁殖能力が低下したという報告があります。また、20nm以下のサイズのマイクロプラスチックは、細胞膜を通過できるため、細胞に物理的に影響を与える可能性が示唆されています。

メダカ

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2つ目は、マイクロプラスチック自身の添加剤や、マイクロプラスチックに吸着した有害物質が生物に取り込まれることによって起こる害です。マイクロプラスチックは、環境ホルモンや、有害な化学物質を吸着する性質をもっています。そのため、マイクロプラスチックを摂取すると、高濃度の有害な化学物質を体に取り込んでしまう可能性が高くなります。メダカの実験では、アメリカのサンディエゴの港に3ヶ月間漬けておいたマイクロプラスチックをメダカに食べさせたところ、メダカの肝機能に障害が出たり、肝臓に腫瘍ができるということが確かめられました。人への害について、明らかになった研究は今の所ありませんが、マイクロプラスチックを取り込む機会が多いと慢性的に高濃度の有害物質にさらされる可能性が高くなり、ガンなどの発病リスクが高まると考えられています。しかし、誰がどれくらいのマイクロプラスチックを摂取しているかというデータがほとんどなく、それに加えてガンの原因はわかりにくいことが多いため、ガンの発病率とマイクロプラスチックの摂取量との因果関係は明らかになっていません。

また、これらのマイクロプラスチックは、汚染物質とくっついたまま海流などによって運ばれるため、いままで汚染されていなかった場所に汚染物質を運ぶ働きもするといわれています。

まとめ

すでに地球全体にマイクロプラスチックが広がっていると考えられるため、目に見えないマイクロプラスチックの摂取をしないようにすることは、ほとんど不可能に近いことだと考えられます。また、マイクロプラスチックは非常に小さな物質であるため、一度自然界にばらまかれたものを回収することも不可能です。マイクロプラスチックの害をできるだけ小さくするためには、今後自然界に加入するプラスチックを減らし、これ以上蓄積されないようにするしかありません。また、マイクロプラスチックが環境汚染物質を吸着し、地球の様々な場所に汚染物質を運び、人体に悪影響を及ぼすことが懸念されています。このことは、遠い国の環境汚染が、決して対岸の火事では済まないということを示しています。同時に、自分の国や地域が作ってしまった環境汚染物質が、海を超えて遠い異国の地で悪影響を及ぼす可能性が十分にあることを示します。