意図的に導入された外来種マングースが起こした生態系破壊

2019年3月8日 ALL生物
Image from Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/フイリマングース#/media/File:Huirimongoose2.jpg

マングースは、ハブを駆除する目的で沖縄に入れられた後、沖縄で問題になっている外来種だということは、ご存知の方も多いと思います。マングースは、どういった経緯で連れてこられ、何が問題となっているのでしょうか。今回と次回は、沖縄でのマングース問題を解説します。

マングースとは?

日本には在来のマングースはいません。日本で、マングースというと日本に侵入したフイリマングースを指すことが多いと考えられますが、マングース科の動物は、10属以上あり、また、種類も30種以上います。日本人にとって比較的馴染みのあるミーアキャットも、マングース科の動物です。マングース科の動物は、アフリカ、インド、東南アジアにかけて分布し、森林からサバンナまで多様な環境に生息しています。ハブを襲う動物として有名ですが、日本に定着したフイリマングースは、昆虫類、鳥類、爬虫類、哺乳類から果実まで食べる雑食性で、昆虫類が主な食べ物であることがわかっています。

photographed by Marzena7 on Pixabay マングースの一種

沖縄に入れられたマングース

1910年に、渡瀬庄三郎という動物学者によって、ガンジス川流域で捕獲されたフイリマングースが沖縄に持ち込まれました。その目的は、サトウキビ農園に害をもたらしていたネズミの駆除と、ハブの駆除でした。現在沖縄にいるマングースは、そのときに持ち込まれた、17頭のマングースの子孫です。害獣の天敵を導入することによって、害獣をコントロールする方法を生物的防除といいます。当時、マングースによる生物的防除は、沖縄に限らず世界の他の地域でも行われました。沖縄にマングースを導入した渡瀬庄三郎は、生物の分布について研究し、渡瀬線という有名な生物分布の境界を提唱した学者でした。生物の分布について研究している学者ですら、ほんの100年前まで、外来の動物を自然界に導入する危険性について、それほど理解していなかったのです。

マングースにハブの駆除効果はほとんどなかった。

ハブ Photo by No specific photographer credit [Public domain], via Wikimedia Commons

現在の沖縄には、マングースが広く分布していますが、ハブもたくさん生息しています。結果的に、マングースは、ハブの生息にほとんど影響を与えなかったと考えられています。その原因の一つは、マングースが昼行性で、ハブが夜行性であるということです。また、マングースは、猛毒をもっている危険なハブとわざわざ戦ってハブを食べなくても、もっと安全に食べられる生き物が他にウロウロしているのですから、そちらを好んで食べていると考えられます。

マングースはどのような問題を起こしているのか。

島に生息している肉食者は、大陸に生息している肉食者よりも種が限られていることが多いです。そのため島では、天敵から逃げる能力の低い、飛べない鳥や動きの遅い爬虫類でも繁栄することができます。そんなところに、大陸仕込みのハンティングの名手を入れた結果は、火を見るよりも明らかです。なんでも食べるマングースは、片っ端から捕まえやすい生き物を捕食して、どんどん沖縄に広がりました。沖縄では、マングースが侵入した地域で顕著にヤンバルクイナが減少し、1985年からの20年間だけで生息域は、40%減少しました。

ヤンバルクイナ

やんばる地域を車で走ると、時々ヤンバルクイナが道路を横断するところに出くわします。頭を前に突き出して小走りで走る姿は、どことなくひょうきんで可愛らしい生き物です。

絶滅危惧種に指定されているハナサキガエルやオキナワキノボリトカゲ、鳥類のホントウアカヒゲなど、多くの分類群の希少種がマングースにより捕食されていることが明らかになりました。奄美大島でも、アマミノクロウサギ、ケナガネズミなどの希少種を捕食していることが確認されています。西インド諸島やフィジー諸島などの島では、マングースによる爬虫類の絶滅も起こっているようです。

ハブの数を減らすために導入したマングースですが、結局ハブはほとんど食べることありませんでした。それどころか、在来の生物を捕食し、爆発的に個体数を増やした結果、本来の生態系に甚大な被害を与えています。次回は、沖縄でのマングースの駆除の取り組みについて解説します。