つくしづくし -生態から食べ方まで-

今年もツクシの季節がやってきました。ちょっと春のような暖かい日差しの日があったな、と感じると、すかさず地面から顔を出すのがこのツクシです。視覚にも味覚にも、春の喜びを感じさせてくれるツクシの生態から美味しい食べ方まで紹介します。他の山菜の食べ方については、旨い春に書いておりますので、ぜひご覧ください。

ツクシってどんな生き物?

ツクシは、シダ植物門に入るトクサ科トクサ属スギナの胞子茎です。胞子茎とは、胞子嚢をつける茎のことを指します。ツクシの胞子嚢は、胞子(緑の粉)がでる、てっぺんの部分です。

スギナの胞子嚢

スギナの胞子嚢

ツクシから出た胞子は、発芽してメスの配偶体、もしくは、オスの配偶体となり、卵もしくは精子を作ります。精子がメスの配偶体の造卵器の中に入り、卵と受精すると、新しい植物が芽生えます。つまり、種子植物は、精子を放出して、植物体にある卵と受精させますが、シダ植物は、未熟な卵巣や精巣のもと(つまりこれが胞子)を放出してばらまくイメージです。ツクシが出た後に、今度は同じ地下茎から葉緑体をもったスギナが出てきます。このスギナは、光合成をして栄養を作るため栄養茎といわれます。種子植物でいうと、まず花を咲かせ、その後葉を出す桜と同じようなイメージです。ツクシが出ている時期は、ほんの短い期間であり、スギナも冬には地上部がなくなってしまいますが、地中では地下茎がしっかりと生きており、地下茎を伸ばし、その地下茎が切れることによっても、新しい株がどんどん作られます。

ツクシが生えやすいところ

田園風景

ツクシがよく出る田んぼの土手

よく見つかるのが、田んぼや畑、川の土手です。湿り気があるところの方が多いような気もしますが、植栽の間や、駐車場など、一見したところあまり湿っていない場所でも見かけることがあります。胞子体が発芽するには、湿った環境が必要ですが、一度定着してしまえば、それほど土壌の湿り気は関係ないのかもしれません。酸性土壌を好み、また、土壌があまり肥沃でなくても育ちます。スギナは、地上部がなくなっても地下茎が生きており、次の春もまたそこからツクシを出すので、たくさんツクシが生えているところは、翌年もたくさんのツクシが生えると考えられます。

美味しいツクシの調理法

ツクシを美味しく食べる方法を紹介します。私はツクシをとってくるといつもこの調理法で食べます。ツクシは、アクがとても強いので、アク抜きをきっちりすることがツクシ料理の一番のポイントです。

スギナの胞子体

左が胞子を出し切ったツクシ、右が胞子を出している最中のツクシ。胞子を出し切ったものはガシガシした食感になるので、右のちょうど胞子を出し始めたころのツクシが食べ頃です。

【ツクシの卵とし】

  1. 袴を取る。手がアクで黒くなり、2,3日とれないので、気になる方は手袋をした方が良いです。

    ツクシ

    袴を取ったツクシ

  2. 沸騰した熱湯にツクシを入れます。2,3分湯がいてアクを取ります。湯がきすぎると、味が抜けますが、湯がき足りないとアクが残ります。湯がいたツクシは、冷凍保存できます。ツクシ
  3. 油で炒めます。ある程度炒めたところで、砂糖を加えてよく和えつつ更に炒めます。砂糖は、アクを取るために多めに入れます。アクが残ると美味しくないので、多すぎるかな、と思うぐらい入れるのがポイントです。やや甘みあって、かつ、渋みが感じられなくなる程度まで砂糖を加えましょう。砂糖の次は、濃口醤油、薄口醤油、酒を加えます。これらの調味料の分量は、お好みで。つくしの卵とじ
  4. 溶き卵を加え、卵が固くならないうちに火から上げます。完成!つくしの卵とじ