一風変わったカタツムリの生き方

2019年6月9日 ALL生物

前回に引き続き今回もカタツムリのお話です。
今回は、カタツムリの恋や、好きな食べ物、他の動物との関わりなど、カタツムリの生き方についてお話します。

カタツムリの恋

カタツムリの恋は、人間とは一味違います。というのは、多くのカタツムリ(有肺類)は雌雄同体だからです。つまり、一つの個体が、雄の生殖器も雌の生殖器もどちらも持っています。交尾では、互いに精子を受け渡し、互いに自分の卵子を受精させます。つまり、同種であれば、全個体恋愛対象です。有肺類のカタツムリは雌雄はありませんが、別個体への誘惑をちゃんと行うものもいます。マイマイ属のカタツムリは、頭の上にコブ状のものを発達させ、性フェロモンを分泌していると考えられています。人間でいうところの香水をつけて、自分の存在を別個体に知らせます。カタツムリ
多くのカタツムリが雌雄同体である理由にも、移動能力の低さが関わっています。カタツムリはあまり移動しないため、別個体に会う機会が非常に少ないですが、カタツムリに雌雄が合った場合、たまたま出会った個体が同性であると交尾をすることができません。同性だけにしか会えず交尾ができないまま一生を終えてしまうリスクが、性を持つメリットを上回るため、多くのカタツムリは雌雄同体であるのだと考えられています。

コンクリートで見つかるカタツムリは何をしているのか

カタツムリをコンクリートの上で見つけたことがある方は多いのではないでしょうか。単に、コンクリートの上にたまたまくっついている個体は、見つかりやすいというわけではありません。コンクリートに好んでやってきているようです。実は、カタツムリは、コンクリートの上でお食事中なのです。しかも、コンクリート自体を食べているようです。身を守るために大切な、カタツムリの殻は炭酸カルシウムでできているため、多くのカルシウムを必要とします。カタツムリは、コンクリートを食べることで、効率よくカルシウムを摂取することができます。
カタツムリにとって、カルシウムが十分手に入るかどうかは、結構重大な問題らしく、カルシウムを多く含む石灰岩質の土壌の地域では、多くの種のカタツムリが見られますが、カルシウム含有量が少ない火山地域や花崗岩地帯では、カタツムリの種数はそれほど多くありません。

鳥類にとっても重要なカルシウム源となるカタツムリ

カタツムリ
カタツムリは、上記のように一生懸命、カルシウムを摂取して、殻に蓄えています。つまり、皮肉なことに、他の生き物からすれば、絶好のカルシウム源になるのです。鳥の卵の殻にも、カルシウムが多く使われています。鳥は、カルシウムがたっぷり含まれた硬くて割れにくい殻を作るために、卵を産む時期にはより多くのカルシウムを摂取しようとします。そんなときに、カタツムリは、鳥たちの絶好の餌資源となるのです。

鳥を利用するカタツムリ


一方、こんな興味深い研究もあります。移動分散能力が著しく低いカタツムリですが、鳥に運んでもらうことによって、移動分散するカタツムリがいるようです。本州南部、四国、九州、沖縄や小笠原諸島などに生息するノミガイという体長2〜2.5mmの非常に小さなカタツムリは、メジロやヒヨドリといった鳥に食べられても、15%の個体が生き残り、糞として排出されます。交尾を済ませたノミガイが鳥に食べられた場合は、新しい土地に入ったのがたった1匹であっても子孫を残し、個体数を増やすことができるのです。

参考文献:野島智司 (2015) 『カタツムリの謎』 誠文堂新光社