今年は涼しい日が多いせいなのか、まだまだ数は少ないですが、7月に入り、やっとセミの声が聞こえるようになりました。今回は、日本で夏によく見られるセミの仲間を紹介したいと思います。
アブラゼミ
セミ科アブラゼミ属アブラゼミ Graptopsaltria nigrofuscata
体長は約5cmで、幼虫期間は、2-4年です。セミの仲間で、羽に色がついている種は、世界的に見ると実は珍しいです。
北海道から九州、屋久島まで分布します。
日本以外では、朝鮮半島、中国北部にも生息します。
成虫は、バラ科樹木で多く見られます。7月から9月くらいまで頻繁に鳴きます。他のセミに比べて、夜に鳴いているのが、よく観察されています。
関東以西の都市や、北日本の一部の地域では、都市で生息数の減少がみられています。その原因については、幼虫が、乾燥した土壌では生きられないため、温暖化や都市化が影響しているという説がありますが、一概にその説では説明できない増減が投稿されている地域もあるようです。
ミンミンゼミ
セミ科ミンミンゼミ属ミンミンゼミ Hyalessa maculaticollis体長は約3.5cmで、幼虫期間は、2-4年です。
北海道から九州に分布します。
日本以外では、韓国、中国華北に生息します。高温を嫌う傾向があり、東日本では、低地でも見られますが、西日本では、ほとんど山地林でしか見られず、生息数も少ないです。
成虫は、ケヤキやサクラなどの樹木で見られます。7月から9月くらいまで頻繁に鳴きます。
森林性のセミであり、東京23区や、横浜市、仙台市の街中で見られるのは、例外的なようです。幼虫が乾燥した土壌を好むため、ヒートアイランド現象によって乾燥化した一部の都市部にも好んで現れるようになったと考えられています。
クマゼミ
セミ科クマゼミ属クマゼミ Cryptotympana facialis
体長は約6-7cmで、幼虫期間は、2-5年です。日本ではヤエヤマクマゼミの次に大きな種です。
本州の関東から沖縄に分布します。
日本以外では、韓国、中国に分布すると言われていましたが、タカサゴクマゼミの誤同定の可能性もあるようです。温暖な地域を好み、平地や低山地、都市部でもよく見られます。
成虫は、特定の樹種に限らず、様々な種の広葉樹でみられます。7月から9月に見られますが、特に7月下旬から8月上旬に最も多くみられます。
1980年代以降、西日本の都市では、セミ全体に対するクマゼミの割合が増加していることが報告され、生息域の北上も確認されています。クマゼミの個体数増加や生息域の変化の原因については、温暖化の他に、東京ディズニーランドの人工林での出現のように樹木の移植に伴って持ち込まれ定着したといった例もあるようです。一方、鹿児島市では、クマゼミが激減したことが報告されており、セミ全般に通じることですが、増減の要因は、複雑なようです。
ニイニイゼミ
セミ科ニイニイゼミ属ニイニイゼミ Platypleura kaempferi体長は約2cmで、幼虫期間は、2-4年です。羽には、色がついており、茶色くて平べったい印象があるセミです。抜け殻は泥をかぶっていることが多く、見分けやすいです。
北海道から沖縄に分布します。
日本以外では、台湾、中国、朝鮮半島にも分布します。
成虫は、サクラの木でよく見られます。6月下旬から見られ、9月頃には少なくなります。夏に見られるセミの中では、早く鳴き始める種です。
平地の雑木林でよく見られる種であり、都市化の影響で数を減らした地域もありました。しかし、近年都市部で増え始めているという報告があります。東北地方では、増加しており、地球温暖化の影響と考えられています。
ツクツクボウシ
セミ科ツクツクボウシ属ツクツクボウシ Meimuna opalifera体長は約4.5cmで、幼虫期間は、1-2年です。特にオスは細長い体型をしています。よくヤミヤドリガに寄生されているものが見つかります。日本に生息するセミの仲間では、土の中にいる期間が短い種です。
北海道から沖縄に分布します。
日本以外では、台湾、中国、朝鮮半島にも分布します。
成虫は、特に好む樹種はなく、シダレヤナギ、ヒノキ、カキなど幅広い種類の木にとまります。7月頃から発生しますが、数が多く、鳴き声が目立つようになるのは、8月から9月です。西日本では、10月頃まで鳴き声が聞こえる地域もあります。
基本的には平地から山地まで幅広く生息する森林性のセミですが、盛岡市など地域によっては、市街地でも見られます。冬の寒さに弱く、北日本ではあまり見られませんでしたが、近年増加傾向にあり、以前は生息していなかった北海道でも近年鳴き声が聞かれるようになりました。
お出かけの際は、セミの鳴き声にも耳を傾けてみてください。自分の住んでいる地域とは違うセミのオーケストラが楽しめるかもしれません。