海の外来種問題

2020年4月28日 ALL生物

外来生物といえば、陸地の生き物について考えることが多いのではないでしょうか。海は、陸地のように分断されることなく、世界中つながっています。しかし、外来生物は存在します。今回と次回は、陸地に住む私達には、あまり馴染みのない海の中の外来生物についてのお話です。

海の外来生物って?

海にも、水温、栄養塩濃度や塩分濃度といった環境の違いがあるため、その変わり目が生物相の境界となり、種ごとの生息域は分断されています。また、決まった方向に流れる海流も、生物の移動を大きく制限します。そのため、人が持ち込まない限り移動することのない生物が、海にも多く存在します。そのような生物が別の海に運ばれると、そこで増殖し、その環境を大きく変えるような影響を与えることがあります。

最も古い海の外来生物は牡蠣

世界で最も古い海の外来生物として知られているのは、日本にも住んでいるマガキ(牡蠣)です。16世紀に、頻繁に東アジアに来ていたポルトガル船が、マガキをポルトガルに運んだと考えられています。マガキは、ポルトガルやその周辺の大西洋沿岸に定着しています。

有用な生き物が、世界的に大問題を起こす外来生物に

日本でよく食べられているワカメ(Undaria pinnatifida)は、北東アジアを原産地とする海藻ですが、ヨーロッパ、オセアニア、北米、南米に侵入し、定着しています。定着した地域では、大量に繁殖し、環境を変えてしまうため、大きな問題になっており、国際自然保護連合(IUCN)によって選定される世界の侵略的外来生物ワースト100にも選ばれています。

ムラサキガイ Photo by Andreas Trepte / CC BY-SA

ムラサキガイ(ムール貝)は、地中海原産の生物であり、日本で初めて見つかった外来の貝類です。1932年に神戸港で初めて発見され、1950年代末までには、全国に分布が広がりました。記録がないため、確かなことはわかりませんが、ムラサキガイは、在来の生物と付着場所を取り合い、在来生物の生息場所に影響を与えていると考えられています。また現在でも、在来種キタノムラサキガイと交雑したり、在来二枚貝を駆逐したり、船体や漁具に付着して汚損するなど多くの被害が報告されています。ムラサキガイも、日本だけでなく、世界的に広がり定着している種です。

日本の海洋外来生物は、何によって運ばれてくるのか。

日本にいることがわかっている国外起源の外来海洋生物76種のうち、29種(37.7%)が船で運ばれてきたと考えられる生物です。28種(36.5%)が養殖、放流により意図的に導入され、15種(19.5%)が水産物や水産種苗に混じって非意図的に導入され、1種(1.3%)が観賞用の海藻が野外に流出しました。残り3種は不明です。

どのような外来海洋生物が日本の海にいるのか。

日本の国外起源の海洋外来生物76種の分類群ごとの内訳は、以下のようになります。
巻き貝や二枚貝といった軟体動物19種、エビ、カニ、フジツボといった甲殻類24種、魚類10種、海藻類6種、病原性寄生生物12種、環形動物多毛類3種、原索動物ホヤ類2種です。魚類と病原性寄生生物以外の54種は、海の底で生活をする底生生物です。海外の外来生物でも、日本と同様に、底生生物が多いという特徴が見られます。

【参考文献】
日本プランクトン学会・日本ベントス学会編(2009)『海の外来生物 人間によって撹乱された地球の海』東海大学出版会