このユリはどうしてこんなに泥をかぶってるんだろう、いや、芋虫のウンチが大量に残されているのか、いやいや、ウンチが動いてる!と(私がやったように)人間ならどんどん近づいてよく見ようとするかもしれませんが、鳥なら、泥や芋虫のウンチだと思った時点でそれ以上興味を持たないでしょう。今回は、自分のウンチを身にまとうことで捕食者を騙すユリクビナガハムシという昆虫についてのお話です。
ユリクビナガハムシとは?
甲虫目ハムシ科の昆虫です。ヨーロッパ、中国、朝鮮半島、台湾などで見つかっており、日本には、本州、九州に生息します。また、ブラジルやメキシコに侵入しています。成虫の大きさは、1cmほどです。幼虫も終齢では8mmほどの大きさになります。
ユリクビナガハムシの生活史
あまり詳しく生態の研究はされていないようですが、大まかには以下のような生活史であると考えられています。
成虫は土の中で冬を越し、4-5月に地上に出てきます。5月頃に食草の葉の上に卵を生みます。
1-2週間後卵が孵化し、幼虫はユリの葉を食べます。
1ヶ月後に土の中で蛹になり、約20日後に成虫になります。成虫もユリの葉を食べます。成虫は9月頃まで見られます。
何を食べているの?
日本ではなぜか成虫も幼虫も栽培されているユリ上でしか報告例がないようです。世界では、ユリだけではなく、タマネギ、アスパラ、ニンニク、タデ属の植物、スズラン属の植物を食べているという報告があるようです。
糞を背負うことにしたユリクビナガハムシの幼虫
芋虫は、一般的に動きが遅くて捕まえやすく、捕食者にとっては格好の獲物です。そのため芋虫は、捕食を免れるために様々な手段を持っています。棘で体中を覆った毛虫、木の端くれなどをまとったミノムシ、鳥の糞に似た見た目をしたアゲハチョウの若齢幼虫などがその例です。ユリクビナガハムシの幼虫は、食べれば勝手に出てくる糞を上手く廃材利用していると言えます。
糞はとても柔らかく指でこすると簡単に取れてしまいます。