有袋類の分布域が狭い理由

2021年4月18日 ALL生物

有袋類といえばオーストラリアに住んでいるというイメージがある人が多いかもしれませんが、アメリカ大陸にも有袋類はいます。どうして有袋類は、遠く離れたこれらの大陸にのみ分布しているのでしょうか。今回は有袋類の分布の謎についてのお話です。

哺乳動物の分類

クアッカワラビー

カンガルー科クアッカワラビー

哺乳類は、約4300種ほどが知られており、有胎盤類が約4000種、有袋類が約300種、単孔類5種からなります。有胎盤類は発達した胎盤を持つ動物で、大抵の動物がこれに当たります。有袋類は有胎盤類ほど高機能な胎盤を持っておらず、未熟な状態で生まれた子供を育児嚢で育てます。育児嚢は、普通、腹部にある袋状の器官であり、中には乳頭があります。単孔類は、卵で子を産むのが特徴で、カモノハシ科とハリモグラ科からなります。

有袋類の分布

キタオポッサム

キタオポッサム Photo by Cody Pope, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

アメリカ大陸には、ケノレステス目ケノレステス科の1科3属6種、オポッサム目オポッサム科の1科17属87種が存在します。北アメリカにいる種は、キタオポッサムのみで残りの種はすべて南アメリカに分布します。

オーストラリアの有袋類はフクロネコ目、バンディクート目、双前歯目、フクロモグラ目、ミクロビオテリウム目の5目、約20科、約200種で、様々な形態や食性を持ったものが含まれます。

なぜ有袋類はオーストラリアとアメリカ大陸にのみに居るのか?

アデロバシレウス Imaged by Nobu Tamura (http://spinops.blogspot.com), CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

現在わかっている最古の哺乳類は2億2500万年前のアデロバシレウスという動物であり、卵生でした。その後、有袋類は有胎盤類より先に出現し、有胎盤類は約1億6000万年前に有袋類と分岐しました。最初の有胎盤類は、樹木に登って樹間を動き回る小さな動物だったと考えられています。あとに出てきた有胎盤類は有袋類との競争に勝ち、有袋類を駆逐していきましたが、オーストラリア大陸と南アメリカ大陸には、地理的な影響により侵入することができなかったと考えられます。そのため、オーストラリア大陸と南アメリカ大陸のみで有袋類が繁栄し続けました。

コアラ

しかし、南アメリカの有袋類は繁栄し続けることができませんでした。約300万年前に南アメリカは北アメリカと接続し、北アメリカから有胎盤類が南アメリカに侵入しました。このため、南アメリカの有袋類は衰退し、オポッサム目とケノレステス目の2目のみが残る現在の状況になりました。一方、南アメリカから北アメリカに侵入することができた種もいます。キタオポッサムは、北アメリカで唯一の有袋類として現存しています。