ネギ坊主はあまり花のように見えない形をしていますが、れっきとした花です。私達にとっては鑑賞するにはちょっと地味すぎる花ですが、虫たちには結構人気があります。今回は、意外と人気者のネギ坊主についてのお話です。
ネギってどんな植物?
ネギ Allium fistulosum は、キジカクシ目ヒガンバナ科ネギ属の植物です。中国西部、中央アジアが原産です。少なくとも紀元前200年頃には中国で栽培され、日本には奈良時代に渡来しました。
ネギ坊主ってどんな形状?
小さな花が、数十から数百個集まって球形になっています。一つの花は、6枚の花弁からなり、花弁が開くと中から6つの雄しべが出て、花弁より長く伸びます。
花弁より雄しべを長く伸ばすことによって、花の底にある蜜を取るために体を潜り込ませたり、口吻を挿し込んだりする昆虫の体に多くの花粉が付く仕掛けになっていると考えられます。
蜜はこの部位にほんの少し入っています。なめてみるとほんのり甘みを感じました。
一つ一つの花は、ネギ坊主の上から下に向かって順に咲いていきます。
役目を終えた雄しべは、糸状になってネギ坊主の表面に残ります。
ネギ坊主にやってきた昆虫
アオスジアゲハ
アオスジアゲハ Graphium sarpedon は、アゲハチョウ科アオスジアゲハ属のチョウです。都市周辺でもよく見られるチョウです。東アジア、東南アジア、オーストラリア北部に分布する南方系のチョウです。日本では、東北地方南部が分布の北限です。
せわしなく次々と口吻を花の中に突き刺していました。ネギの花は、花弁を大きく開かず花冠筒は狭いです。細い口吻を持ったチョウは、効率よく蜜が吸えるのかもしれません。顔や口吻にネギのものと思われる花粉をたくさんつけていました。
セイヨウミツバチ
セイヨウミツバチ Apis mellifera は、ミツバチ科ミツバチ属のハナバチです。ヨーロッパ、アフリカ、中東、中央アジアから中国西部に自然分布しますが、日本には、自然分布しません。一部の島を除き、日本の野外で見られるものは養蜂用に育てられているものです。セイヨウミツバチはニホンミツバチと違い、巣を襲うスズメバチに対抗する手段を持っていないため、スズメバチが生息している地域では野生化できないと考えられています。
セイヨウミツバチの舌は、チョウの口吻より短いため、顔をかなり花の奥の方まで入れて蜜を吸っていました。
コアオハナムグリ
コアオハナムグリ Gametis jucundaは、甲虫目コガネムシ科の昆虫です。日本には、北海道から九州に生息します。林や原っぱで普通に見られ、成虫は、花粉や雄ずいを食べます。
ネギ坊主上で見つけたものは、単に休んでいたのか、蜜を食べていたのか、花粉の無くなったネギ坊主の中にすっぽり体をうずめて、お尻だけを見せていました。
これらの他にも、ハナバチ類や小さなハエ目が花の上にとまっていました。