菌と共生し、異国の地で大繁茂するマンリョウのお話

2021年12月27日 ALL生物

マンリョウは真冬に赤い実をつけることから正月の飾りに重宝される植物です。実はこのマンリョウ、葉に共生菌を住まわせるちょっと変わった植物です。

マンリョウとは?

マンリョウ

マンリョウ Ardisia crenata はツツジ目ヤブコウジ科ヤブコウジ属の常緑低木です。大きく成長しても高さ100cmほどの植物です。東アジアからインドの温暖帯から亜熱帯に分布し、日本では関東以西から沖縄の照葉樹林帯に自生します。7〜8月ごろに花が咲き、11月頃から4月頃まで赤い実をつけます。センリョウ(千両)に比べて多くの実をつけることから、マンリョウ(万両)と名付けられたと言われています。英語ではクリスマスベリー(christmas berry)とも呼ばれ、海外でも冬の飾りに利用されます。

菌と共生するマンリョウの葉の縁

マンリョウの葉粒菌
マンリョウの葉は大きく波打つ目立つ鋸歯をもっており、その葉の縁には共生菌がいることが知られています。この共生菌は植物の根に小さな瘤を作って共生する根粒菌に対して、葉に共生するため葉粒菌と言われ、昔は根粒菌と同様に窒素を固定すると考えられていました。しかし、葉粒菌がマンリョウの葉の中で窒素固定していることを立証する研究は今のところありません。マンリョウがこの葉粒菌と共生することによって得る利益について、葉粒菌が共生した葉で生産される二次代謝産物が、マンリョウを植食性の昆虫や動物から守る効果があるという可能性が指摘されていますが、詳しいことは分かっていません。この葉粒菌は、種子の中の胚にも感染し、親株から子株に垂直伝播します。

マンリョウに覆われるフロリダの林床

アメリカのフロリダ州では日本から持ち込まれたマンリョウの園芸品種が森林に侵入し、日本ではみられないほど高密度にマンリョウが生育し、林床一面をマンリョウが埋め尽くしている場所があります。日本では1年間に1本の木から作られる新たな実生は約1本であるのに対し、その地域では15本から74本も定着し、日本と比べ圧倒的な早さで増殖していることがわかっています。このような地域では、マンリョウが在来種を駆逐し、生態系に大きな影響を与えることが懸念されています。

【引用文献】

Kitajima, K., A. M. Fox, T. Sato, and D. Nagamatsu. 2006. Cultivar selection prior to introduction may increase invasiveness: Evidence from Ardisia crenata. Biological Invasions 8:1471–1482.

Nakahashi, C. D., K. Frole, and L. Sack. 2005. Bacterial leaf nodule symbiosis in Ardisia (Myrsinaceae): Does it contribute to seedling growth capacity? Plant Biology 7:495–500.

Pinto-Carbó, M., K. Gademann, L. Eberl, and A. Carlier. 2018. Leaf nodule symbiosis: function and transmission of obligate bacterial endophytes. Current Opinion in Plant Biology 44:23–31.

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