メープルシロップって何?

2022年12月21日 ALL生物

ホットケーキには、ハチミツをかけようか、メープルシロップをかけようか。どちらも甘くてとろっとした茶色の液体を想像しながら迷う人も多いかもしれません。いずれの糖分も植物が作ったものですが、ハチミツは、花蜜由来である一方、メープルシロップは樹液由来です。花の蜜が甘いのは、昆虫を呼ぶためですが、樹液が甘いのはどうしてでしょう。
今回はメープルシロップについてのお話です。

メープルシロップってなに?

サトウカエデ

サトウカエデPhoto by Famartin, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

メープルシロップは、その名の通りMaple、すなわちカエデの仲間の樹木から取れる樹液を濃縮したものです。世界の生産量の8割を占めるカナダ産のものは、その多くが北アメリカに自生するサトウカエデ Acer saccharum から採取されます。その樹液はメープルウォーターと呼ばれ、糖度は3%くらいしかありませんが、一本の木から40〜80L採取できます。そのメープルウォーターを煮詰めて水分を飛ばし、糖度を高くしたものがメープルシロップです。

日本産のものは、イタヤカエデ、オオモミジ、ウリハダカエデなどから採取されますが、サトウカエデに比べると糖度が低いです。

どうして甘い樹液を作るの?

Crown_Maple_Syrup

Photo by Lisabsowitzsilverman, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

カエデがメープルシロップに含まれる糖を生産する理由は、秋にデンプンを多く蓄え、冬期にそのデンプンを糖に変えて細胞内の糖度を上げ、細胞が凍らないようにするためです。通常、水は、0度以下になると凍りますが、水分中に溶けている糖の量が多ければ多いほどより低い温度まで凍らなくなります。植物の細胞内で水が凍ると、水の結晶が細胞を傷つけ、植物は死んでしまいます。冬に生育する植物の中には、細胞内が凍らないようにするために、細胞内の糖度を高くする植物が多くあります。ダイコンやホウレンソウなどの野菜も、気温が低い時期により甘くなります。

いつ取れるの?

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メープルシロップ採取の様子 Photo by Davepape, Public domain, via Wikimedia Commons

樹液なら幹を傷つければいつでもでてくるんじゃないかというイメージがある方は多いかもしれません。しかし、サトウカエデの樹液は、3月〜4月の雪解けが始まった頃のみしか採取できません。それには、植物の生理生態が強く関わっています。

どうしてメープルシロップは、春にしか取れないの?

サトウカエデ

サトウカエデ Photo by Famartin, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

植物は、最も寒い時期に最も細胞内の糖度が高くなるように糖を用意しているはずですが、それではどうして真冬にメープルシロップは取れないのでしょうか。その答えは、メープルシロップの原料は、細胞から滲み出した液体ではなく、導管を流れる液体だからです。

サトウカエデは雪解けの頃になると、毛細管現象と、土に含まれる水分の溶質の濃度と樹木内の水分の溶質の濃度との差による浸透圧(根圧)を利用して地面から水を吸い上げます。メープルウォーターは、樹木にドリルで穴を開けそこから出てくる導管内の樹液です。暖かくなり樹木が活動を再開すると、呼吸や枝葉などの生産に糖を消費するため、導管内の糖は減り、それに伴って根圧も低下します。そのため、メープルシロップの原料の採集は早春にのみ行われます。