クチナシの実って誰が食べるんだろう?

2023年2月19日 生物

果実が少なくなった2月の上旬、これまで誰にも手をつけられることなく残されていたクチナシの実もついに誰かに食べられ始めました。今回は、誰がクチナシの実を食べたのか調査しました。

クチナシの実

クチナシの実

クチナシ Gardenia jasminoides は、アカネ科クチナシ属の常緑低木です。果実は秋に熟れ始めます。熟すにつれて緑色から黄色そしてオレンジ色に変わります。熟しても硬い果皮が種子を包んだままなので、中身を取り出すには果皮をちぎらなければならず、食べるにはひと手間かかります。果皮の中には100個ほどの種子が入っています。種子の周りには果肉がついていますが、香りや味はほとんどありません。

クチナシの実は、昔からヒトにもよく利用されており、たくあんや栗きんとんなどの食べ物や、衣服を黄色くするのに使われてきました。また、漢方薬としても利用されており、止血や解熱、利尿など効果があるとされています。

クチナシの実を食べに来たのは?

調査したクチナシの木の近くには、マンリョウやキミノセンリョウもありましたが、それらの実は1月頃にほとんど食べつくされ、その後2月上旬ごろにクチナシの実がなくなり始めました。クチナシの実を食べに来たのは、シロハラでした。

シロハラ

シロハラ

シロハラ Turdus pallidus は、ヒタキ科ツグミ属の冬鳥です。日本には、本州以南の低地に越冬のために飛来し、中国東北部やロシアで繁殖します。地面を歩きながら、昆虫やミミズなどを捕食する鳥ですが、果実を食べるところもよく観察されます。

2月4日から12日までカメラを設置したところ、クチナシの実をつつきに来たのが2回確認できました。1回はクチナシの枝にとまり、実1個を咥えて持ち去りました。果皮を破って中身を出すために、作業がしやすい安定した地面に運んで食べるのかもしれません。実際にクチナシの木の周りには、中身のない果皮が散乱していました。

クチナシの実

地面に散乱したクチナシの果皮

クチナシの実

地面に落ちていた中身が食べられたクチナシの果皮

もう1回は、枝に止まって2個の実をつつきすぐに飛んで行きました。

前回カメラを仕掛けたセンリョウやマンリョウと異なり、クチナシは枝がしっかりしているので、止まりやすそうです。半分突かれた実が木に残っていることもあり、足場が良ければ木に止まって突いて食べることもあるようです。

クチナシの実

かじられたクチナシの実

隣に植えられているマンリョウとキミノセンリョウには、それぞれヒヨドリとジョウビタキが訪れましたが、それらの2種の鳥はクチナシでは確認できませんでした。一方、マンリョウとキミノセンリョウに訪れなかったシロハラがクチナシの実には訪れました。やはり鳥の種によって果実の好みが異なるのかもしれません。