よく蠢くノミの幼虫
ノミの成虫は高くジャンプすることが知られていますが、案外モゾモゾと這うように移動することを前回のブログで紹介しました。では、幼虫はどういう動きをするのでしょうか。今回は、普段目にすることはほとんどないノミの幼虫の姿や移動の様子について詳しく紹介したいと思います。
幼虫の形態
ネコノミ Ctenocephalides felis の体表は全体的には滑らかですが、尾部に剛毛が何本か生えています。そこにゴミを絡みつけながら動いている様子が観察されました。頭部は、他の部位に比べてすぼんでおり、盛んに左右に動かしながら周囲の様子を確認するような動きをしました。
ネコが掻いた時に落ちた粉の観察
ノミがついたネコが普段寝ているところの周囲に粉が落ちていたので集めて観察してみました。
肉眼でも、黒っぽい粒と白っぽい粒があるのが確認できましたが、白っぽいものはノミの卵、黒っぽいものの多くはノミの糞と考えられます。その中に、大きさ0.7mm – 4mmほどの幼虫が確認できました。ノミの幼虫は3齢まであります。観察した幼虫には大小様々なものが混じっていたため、おそらく全齢が揃っているものと考えられます。梅雨である7月上旬は連日、室温が24℃〜33℃、湿気70%から95%くらいでした。少なくともこの条件下でノミは卵を盛んに産み、幼虫も育つようです。ノミの幼虫は吸血することなく、成虫の糞や寄主のフケなどを食べて育ちます。そのため、ネコが掻いたときに出てくるフケなどの中にとどまっているだけで食べ物にありつけ、自分で探し回る必要はほとんどないと考えられます。
ネコノミの幼虫の移動
多くの幼虫はフケやノミの糞などの中でウニョウニョと頭を動かしているだけですが、4mmほどに成長したもの(観察した中では最大サイズ)では大きく移動する様子も見られました。齢が進むほど移動能力は高くなるようです。ただ、基本的には一方向に直線的に移動するような動きは見られず、あまり遠くへ拡散しようとはしない印象を受けました。卵が落ちたところから離れれば離れるほど普段寄主が暮らしている場所から離れてしまう可能性が高く、その結果フケなどの餌も減り、さらに成虫になったときに寄主に出会うことが難しくなる恐れがあります。
【移動の様子】
頭部をしきりに左右に動かしながら進む。
時折、急に方向転換をする。
【約4ミリのノミの幼虫の移動速度】
動画では、5mmをおよそ1.5秒で移動しているので、10cmの道のりを移動するのに30秒ほどかかる計算となる。