選り好みしない半寄生植物:セイヨウヒキヨモギ

2024年5月27日 生物

公園で見慣れない花が群生しているのに気が付きました。調べてみるとセイヨウヒキヨモギとのこと、近年日本で分布を広げている半寄生性の外来植物です。

セイヨウヒキヨモギとは?

セイヨウヒキヨモギの花のアップ

セイヨウヒキヨモギの花のアップ

セイヨウヒキヨモギ Bellardia viscosa は、ゴマノハグサ科の一年生草本です。その種小名(viscosa: 粘り気がある)のとおり、茎に触るとモチツツジのようにベタベタします。ヨーロッパ西部が原産で、日本では1973年に千葉県で初めて見つかり、関東以西で分布を広げています。道ばたや河川敷に生育します。

セイヨウヒキヨモギの生育環境

セイヨウヒキヨモギが生育していた環境:このパッチはイネ科が目立つ

今回私が見つけた場所は、交通量の多い道路に面した公園でした。乾燥した日当たりの良い環境で、延べ5平方メートルほどの範囲に群生していました。同所的に生えていた主な植物は、コバンソウ(イネ科)、ヒメコバンソウ(イネ科)、ハナヌカススキ(イネ科)、ヒメジョオン(キク科)、シロツメクサ(マメ科)、クスダマツメクサ(マメ科)、ヨモギ(キク科)でした。

半寄生するセイヨウヒキヨモギ

セイヨウヒキヨモギが生息していた環境:このパッチはマメ科が目立つ

セイヨウヒキヨモギが生息していた環境:このパッチはマメ科が目立つ

セイヨウヒキヨモギは、自ら光合成をしながら、他の植物に寄生して栄養を得る半寄生植物です。半寄生性の植物といえばヤドリギが有名ですが、こちらは樹木の幹に取り付くため非常によく目立ちます。一方、セイヨウヒキヨモギは宿主の根に寄生するため、地上部を見ている限り寄生植物にはみえず、一緒に生えているどの植物に寄生しているのかもよくわかりません。また、自身でも光合成をするため葉や茎は緑色をしており、一見したところごく普通の植物です。

何にでも寄生するけど、特にイネ科やマメ科が好き

セイヨウヒキヨモギの根

セイヨウヒキヨモギの根:簡単で手で引き抜ける。引き抜いた根を肉眼で見る分には特に変わった点はない。

セイヨウヒキヨモギは、近畿で行われた調査では、コメツブツメクサ、アカツメクサ、ホソムギ、ヒメコバンソウ、カラスムギなど11属23種の植物の根にhaustoria(吸気)とよばれる器官を形成して取り付くことが報告されています。そのことから、特定の宿主に限定せず広く寄生する可能性が高いと考えられています。しかし、セイヨウヒキヨモギに取りつかれると接続部分を木質化して防御する種もあり、セイヨウヒキヨモギが寄生しやすい種と、しにくい種があるようです。セイヨウヒキヨモギは特にイネ科やマメ科、ナデシコ科の根に好んで取り付きます。また、セイヨウヒキヨモギと寄主植物が混生する環境からセイヨウヒキヨモギだけを取り除くと、イネ科とマメ科の植物の地上部のバイオマス量(乾燥重量)が増加することが確認されています。このことは、セイヨウヒキヨモギが寄生することにより、イネ科やマメ科の植物は成長が抑制されてしまうことを示唆します。

[参考文献]
Suetsugu, K., Takeuchi, Y., Futai, K., and Kato, M. 2012. Host selectivity, haustorial anatomy and impact of the invasive parasite Parentucellia viscosa on floodplain vegetative communities in Japan. Botanical Journal of the Linnean Society 170: 69–78. doi:10.1111/j.1095-8339.2012.01263.x.