タラバガニはヤドカリ。カブトガニは?

カニではありません。ヤドカリでもありません。カブトガニは一体何者でしょう。
カブトガニとは?

カブトガニPhoto by Togabi, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
カブトガニ Tachypleus tridentatus は、節足動物門節口綱カブトガニ目カブトガニ科カブトガニ属の生物です。節口綱にはカブトガニ類とウミサソリ類が含まれます。ウミサソリ類の種はすべて絶滅しており、カブトガニ類も現生している種はカブトガニ科に含まれる3属4種のみです。カブトガニの仲間は名前にカニとついていますが、甲殻類に属するカニとは系統的には離れており、現生する生物ではクモやサソリを含む鋏角類と近い関係にあります。このカブトガニ類のうち、日本に生息する唯一の種である Tachypleus tridentatus にカブトガニという和名がついています。ちなみに、田んぼでよく見かけるカブトエビはカブトガニと似た形態をしていますが、カブトエビは甲殻類のミジンコなどが含まれる鰓脚綱に属します。

タイリクカブトエビ Photo by ティティナー, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
分類群としてカブトガニとカブトエビは遠いですが、泥の上や中で生活するという同様の生活様式を持っているため形態が似ていると考えられます。
生きた化石といわれるカブトガニ

カブトガニ Photo by Didier Descouens, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
カブトガニは、古生代カンブリア紀に生息していた三葉虫を祖先種とする生物から2億年ほど前に出現し、現在までほとんど形態を変化させることなく生きています。

三葉虫の一種 Phacops Rana Photo by Didier Descouens, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
役に立つカブトガニ
カブトガニの血液には、大腸菌やサルモネラ菌などの細菌が出す内毒素(エンドトキシン)や真菌の細胞壁を構成するβ-D-グルカンに対してゲル状に固まるという反応を示す物質が含まれます。この特性を用いて細菌や真菌の検出をするための試薬が作られ、臨床下で使用されています。このようにカブトガニの血液は、致死的にもなり得る病気の原因の特定に役立っています。