2025年8月31日

分類的にもキツネじゃないし、見た目も別にキツネじゃない、だけどその名はフクロギツネ

オーストラリアのキャンプ場、暗闇の中、木の上からガサガサと音が。猫ほどの大きさの動物がムシャムシャ花を食べていました。

フクロギツネとは?

フクロギツネ
フクロギツネ

フクロギツネ Trichosurus vulpecula は、哺乳綱双前歯目クスクス科フクロギツネ属の動物で、ネコほどの大きさの有袋類です。和名にキツネとついていますが、日本に生息するアカギツネは、哺乳綱食肉目イヌ科キツネ属の動物で、哺乳動物であるということ以上に近縁というわけではありません。また、キツネは地上を歩き回るのに対して、フクロギツネは主に樹上で生活するため活動場所も異なります。英名は、Common brushtail possum(ブラシのような尻尾のポッサム)であり、ポッサムと呼ばれる動物の一種です。

フクロギツネの生態

フクロギツネはオーストラリア東部と北部、南西部、中央部の一部に分布し、森林から市街地まで様々な環境に生息します。夜間に樹上で果実、花、葉、昆虫、鳥などを食べる、夜行性の雑食動物です。昼間は樹洞やまれに地中の穴などで休みます。妊娠期間は17日前後で、重さわずか0.2gの子を通常1頭生みます。子は腹部の育児嚢で4-5ヶ月間過ごし、その後2ヶ月間ほど母親の背中にくっついて過ごします。

フクロギツネの観察

バウヒニアの仲間
バウヒニアの仲間

オーストラリア北東部のキャンプ場のトイレ脇で、バウヒニア Bauhinia という樹木の仲間の花を食べているマリーバロックワラビーを観察していたところ、頭上でガサガサと音がしました。バウヒニアの樹上を少し探してみると、フクロギツネがこっちを見つめていました。向こうも私たちが気づいたことに気づいたらしく、ライトを当てて観察している間中じっとこっちを見つめて続けていました。一度離れてから、再度こっそり同じ場所に戻ってみると、花をムシャムシャ食べていました。フクロギツネは人に対する警戒心が薄く、人の近くまで寄ってきたり、生ゴミを漁ったりすることもあるようです。

外来種として問題になるフクロギツネ

フクロギツネ

フクロギツネはオーストラリアでは在来種ですが、ニュージーランドでは外来種です。かつて毛皮を利用する目的でニュージランドに放された本種は野生化し、ウシの結核を伝搬するとして駆除対象になっています。また、在来の植物や鳥類や昆虫類を餌資源として食べる影響が懸念されています。有袋類で唯一、世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれています。