ヌートリアという動物を、ご存知でしょうか。現在、主に西日本で分布域を広げている外来種です。警戒心が弱く、夕暮れぐらいになるとノソノソと河原を歩いているのが見られる愛らしい動物ですが、やはり外来種であるため、今後日本で広がった場合、生態系への影響が懸念される動物です。
ヌートリアとは?
ヌートリアは、ネズミ目ヌートリア科ヌートリア属の動物で、南アメリカが原産です。見た目はネズミですが、頭胴長が(しっぽを除いた頭からお尻までの長さ)40 – 60 cm、体重が5 – 9 kgほどもあるので、かなり目立つ生き物です。生後5・6ヶ月頃には性成熟し、年二回、平均5頭の子供を生みます。かなり繁殖力の高い生き物です。寒さには、それほど強くないといわれており、冬期に河川が凍結するような地域では生存できません。冬期には、長い尻尾が凍ることによって弱ったり、流産することが知られています。
ヌートリアの生態
ヌートリアは、水辺付近でのみ生活する生き物です。川の土手に穴をほったり、水面に水生植物を集めたりして巣を作ります。草食性で、ホテイアオイ、ヨシ、ヒシなどの茎や根、葉を食べますが、貝や魚類を食べることもあります。夜行性ですが、人に餌を貰える場合には、昼間にも活動することがあるようです。まだ日がある、夕方くらいから動き始めるため、巣の付近に行くと、のんびり植物を食べているところを見られます。泳ぎが得意で(といっても決して早く泳げるわけではありませんが)、頭だけ水面から出して、泳いでいる姿が見られることもあります。
外来種としてのヌートリア
ヌートリアの毛皮は、水に濡れても保温できる毛皮として、質が高いとされ、ヌートリアは、世界各国で毛皮を目的に導入されました。各地の養殖場から逃げ出したり、放逐されたりした個体が、野生に定着しました。アメリカでは、水草や雑草を除草する目的で、人為的に定着させた地域もあるようです。現在ヨーロッパ、アジア、北米、アフリカと世界中いたるところで野生化しています。日本でも、1940年代後半から1950年代に毛皮の需要が減少し、各地で大量に放逐され、野生化しました。
日本でのヌートリアによる被害
ヌートリアの侵入場所が、護岸工事が施された強い撹乱を受けた川であることが多いせいか、ヌートリアによって希少な水草が絶滅したといった報告は、日本ではないようです。しかし、旺盛な食欲によって、水辺の環境を激変させ、希少な昆虫の生息場所を脅かしているという報告があります。また、ヌートリアによってオギやヨシが茂る場所が減少するのではないかと懸念されています。すでに河川の工事やダムの建設などの影響で、オギ原・ヨシ原は全国的に少なくなっています。それに加え、ヌートリアからの加害もあると、オギ原・ヨシ原を生息環境とする希少な生物の生存にも影響が出る可能性があります。今までのところ、はっきりとしたヌートリアの生態系に対する影響は把握されていませんが、ヌートリアは分布域を拡大しているため、今後侵入した場所で、生態系に大きな影響を与える可能性もあります。また、農作物の被害も報告されています。基本的には、河川周辺から離れた場所へは移動しない性質を持っているので、農作物への被害は、他の農業被害を起こす哺乳動物に比べてそれほど大きくはないようですが、地域によっては、少なからず被害が出ているようです。特に稲に対する被害が最も大きく、イチゴやスイカ、キャベツなどの野菜や果実が食べられている地域もあるようです。
ヌートリアの駆除
ヌートリアは外来生物法によって特定外来生物に指定されており、世界と日本の侵略的外来種ワースト100にも選ばれています。しかし、急に日本全国に分布を拡大したアライグマと比べると関心が薄いためか、日本で駆除の努力はそれほどなされてきませんでした。ヌートリアは警戒心が小さい動物であり、箱ワナにも引っかかりやすいと言われています。
これからどんどん分布域を拡大して問題が大きくなる前に、早急に対処することが望まれます。
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