なぜシマウマはシマシマなのか? -4つの仮説に対する反論-

2020年7月23日 ALL生物

動物の柄の意味を明らかにするのは、意外と簡単なことではありません。オスとメスの柄が異なっている場合には、おそらく、生殖に関することに使っているということが想定されますが、オスもメスも同じ見た目となれば、よりその解釈は難しくなります。というのは、その色が、本人に対して意味がある(e.g. 熱効率の問題)のか、同種に対して意味がある(e.g. 群れの仲間を見つけやすい)のか、天敵である別種に対して意味がある(e.g. 天敵に見つかりにくい)のか考えなくてはならず、また、その作用する相手の感覚器官がどのようであるか(e.g. 色が見えるか。視力はどれくらいか。)を考えなくてはなりません。その上で、その柄がある場合とない場合での差を観察しなくてはいけません。
そんな解釈が難しい動物の柄ですが、近年、シマウマの縞の謎について、「The function of zebra stripes(シマウマの縞の機能; Caro et al. 2014)」という論文で、最も説明力があると考えられる説が出されました。このシマウマの縞の謎について、2回にわたって解説したいと思います。今回はまず、今まで考えられていたシマウマの縞の意味に関する仮説4つと上記の論文がその説をどのように否定しているかについてです。次回は、本論文で最も有力視されている説についての解説をしたいと思います。

仮説1. 後ろの風景に縞模様が溶け込み、捕食者に見つかりにくい。

シマウマ

反論

他の縞をもった偶蹄類は、森林に住んでいるが、シマウマを含む馬の仲間は、開けたところにいることが多く、縞によって紛れられるような環境にいることは少ない。また、縞を持った他の動物の子は、森林内でじっとして身を隠すのに対し、シマウマの子は、常に親について歩く性質を持っているため、行動様式からしても身を隠すために縞を持っているとは考えにくい。

仮説2. 体温を下げるのに役立つ。

縞の白と黒の部分で温度差ができ、空気が流れることで体温が下がるという仮説。

反論

同様の気温や日射のある場所に、シマウマも縞のないウマの仲間もおり、特別にシマウマが暑さに耐性があるとは考えにくい。

[参考]
この説については、NHKの「ダーウィンが来た!」でも検証実験が行われており、野外では、温度変化に対して風による影響が大きいため、縞によって起こる空気の流れによる影響は、無視できるほど小さいと推察される結果が出ている。

仮説3. 捕食者が獲物のサイズや逃げるスピードを間違える。

これは、シマウマの縞模様のおかげで、捕食者がシマウマが走っている速さやシマウマのサイズを見誤り、シマウマを捕らえるのを失敗しやすくなるという説。

反論

ライオンがシマウマを多く捕食することから、まず、ライオンに対しては役立っていないことが推察される。一方、ハイエナは、シマウマをあまり捕食しないが、ハイエナはライオンより体が小さく、シマウマの反撃に対するダメージが大きいことが原因として挙げられる。シマウマの縞が、ハイエナに対する警告の意味があるかもしれないことを否定はできないが、あまり一般的に説明できる説とは言えない。

仮説4. 群れの中で個々を見分けるのに使っている。

反論
縞のないウマの仲間も、シマウマと同様の群れを形成しており、ウマが視覚、聴覚、嗅覚を使って、他個体を認識できていると仮定するなら、縞が他個体を識別するにあたってそれほど重要とは考えにくい。

このように、シマウマの縞の意味については、今までたくさんの仮説が出されてきましたが、どれも説得力があるものではありませんでした。次回は、いよいよこの論文で最も有力だと考えられている説のお話をします。

 

参考文献: Caro T, Izzo A, Reiner RC, et al (2014) The function of zebra stripes. Nature Communications 5:1–10.