まだ多くの人が家にある一番暖かいコートを来て出歩く2月の下旬、他の植物たちが動き出すよりも一足早く花を咲かせる樹木があります。それはマンサクです。
マンサクとは?
マンサク Hamamelis japonica は、マンサク科マンサク属の落葉小高木です。本州の太平洋側から九州の山林に自生する日本固有種です。シナマンサクHamamelis mollisとマンサクを掛け合わせて作られた園芸品種が出回っており、マンサクの仲間は街中でもよく見られます。
マンサクの語源は、開花期が2〜3月と早いことから「まず咲く」や「真っ先」が変化したという説があります。
マンサクの花の形態
華美な花弁を持っている割には、花の密度がそれほど高くないせいか、遠くからそれほど目立ちません。去年の枯れ葉をくっつけたまま花を咲かせていることもあり、そうなると、いよいよ花が目立ちません。
マンサクの花は、1.5cmほどの細長い黄色い花弁をもつ、特徴的な形状をしています。
花びらのように開いた四枚の赤い萼の内側に、4枚の細長くて黄色い花びらがあり、4つの葯と2つに分かれた雌しべをもちます。花には、ほのかな匂いがあります。
マンサクはどうやって受粉するのか。
まだミツバチもチョウもあまり見かけない時期に花を咲かせるマンサクは、どのようにして送受粉を行うのでしょう。華美な花弁や萼は一般的に花粉を媒介する生物を呼ぶための器官であるため、マンサクはスギやヒノキのような風媒植物ではないと考えられます。真冬に花を咲かせる植物には、ツバキやサザンカのように花粉の媒介を鳥に行ってもらうものがあります。昆虫と異なり、恒温動物である鳥類は気温が低い時期にも活動することができるためです。しかし、鳥類に花粉を送粉してもらうためには、花を大きくして、報酬となる花蜜も大量に作らなくてはなりません。
マンサクの花はとても小さく、蜜も多量には作っておらず、鳥が利用しやすい形状ではありません。マンサクの花には小さなハエの仲間が訪花していることが観察されているようです。不思議なことに小さなハエの仲間には、かなり低温でも活動できる種もおり、早春に咲く他の樹木の花でもしばしば見られます。風が吹けば飛ばされてしまいそうな(実際飛ばされる)小さなハエが、実はこのような寒い時期に咲く花の花粉の送粉に役に立っているのではないかと考えられます。