レモンイエローのもふもふ

2022年11月26日 ALL生物

晩秋に差し掛かった公園で、夕日を浴びた美しい生き物を見つけました。リンゴドクガというこの昆虫は、どうしてこのような奇抜な姿をしているのでしょうか。

リンゴドクガとは?

リンゴドクガ
リンゴドクガ Calliteara pseudabietis はチョウ目ドクガ科の昆虫です。ドクガという名がついている上に長い毛が生えているため、いかにも刺されると痛そうですが、成虫も幼虫も毒は持っていません。リンゴにつくドクガ科の昆虫であることから、この名がついたようですが、後述の通り様々な樹木を食草とします。成虫が見られるのは4月〜8月頃、幼虫が見られるのは6月〜11月頃で年2化です。終齢幼虫は4cmほどになります。木の葉に繭を作って蛹になります。冬は蛹で越します。終齢の幼虫の立派な毛は、繭の材料としても使われます。

リンゴドクガ

尾角にはピンク色の毛が生え、いいアクセントになっています。

どこで見られるの?

北海道から九州の平地から山地まで分布します。幼虫は、サクラ、ウメ、リンゴなどのバラ科、クリ、コナラなどのブナ科のほか、マメ科、ムクロジ科、カキノキ科、ヤナギ科など様々な広葉樹の葉を食べます。そのため、幼虫の餌資源の点では、環境の制限が少ない種ではあると考えられます。しかし、派手な割にはそれほど頻繁に見かけることがない昆虫です。

幼虫の観察

11月の中旬、サクラの木の根本に生えていたエノキの若木の上でリンゴドクガの幼虫を見つけました。エノキの若木に、おそらくリンゴドクガによるものと思われる食痕がたくさんありました。リンゴドクガ
ちょっと突くと、頭を腹側に折り曲げ、背中にある二本の黒い筋を見せるような姿勢になりました。これはリンゴドクガの幼虫を驚かしたときの典型的な姿勢です。隙きを見てそそくさと逃げようとすることもなく、下に落ちることもなく、その場を移動せずにじっとする堂々とした姿は、まるで毒を持っているかのようです。

リンゴドクガ

背中の黒い筋を見せつけて威嚇するリンゴドクガ。背中にはモヒカンのような4束の毛の束があります。

カレハガの仲間の幼虫にも、同様の箇所に黒い筋があります。しかし、カレハガの仲間は、毒を持たないリンゴドクガと異なり、その黒い筋のある部位に毒針を持っており、危険を感じるとその黒い部分を露出するような姿勢を取ります。

Gastropacha_quercifolia

ヒロバカレハ Gastropacha quercifolia の幼虫 Photo by katunchik, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

そのため、リンゴドクガは、本当に毒を持っているカレハガの仲間の幼虫に似せた行動を取っている可能性が指摘されています。