カマキリの卵からなんかちゃうのが出てきた!

2024年4月10日 生物

冬に剪定したアセビの木にオオカマキリの卵がついていました。カマキリが出てくるまで飼育してみようと容器に入れておきました。4月3日、なんと出てきたのはカマキリの子供ではなく、小さな甲虫でした。

カマキリタマゴカツオブシムシとは?

カマキリタマゴカツオブシムシ

カマキリタマゴカツオブシムシ

カマキリタマゴカツオブシムシ Thaumaglossa rufocapillataは、コウチュウ目カツオブシムシ科ヒゲブトカツオブシムシ属の昆虫です。体長は3-4mmほどです。日本では本州から九州に分布します。

名前の通り、幼虫はカマキリの仲間の卵を食べます。オオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリ、コカマキリの卵を利用することが報告されています。

オオカマキリ

オオカマキリ

オオカマキリとチョウセンカマキリについて、カマキリタマゴカツオブシムシが卵鞘から出てくる率は20%を超えることも多々あり、カマキリの卵がカマキリタマゴカツオブシムシに食べられるのはそれほど珍しくないようです。なお、カマキリタマゴカツオブシムシが発生したカマキリの卵鞘からカマキリの子が出てくることはほとんどないとされていますが、両方が出てきた例も確認されています。

オオカマキリの卵鞘から出てきたカマキリタマゴカツオブシムシの観察

2月頃に採取した縦3.5cmほどのオオカマキリの卵鞘を20℃ほどの室内で飼育したところ、4月3日にカマキリタマゴカツオブシムシが出てきました。最終的には、合計59匹が発生しました。

カマキリタマゴカツオブシムシが出てきたオオカマキリの卵

カマキリタマゴカツオブシムシが出てきたオオカマキリの卵

卵鞘は外側からみると、崩れることもなく、カマキリタマゴカツオブシムシの入っていない卵鞘と大差なくみえますが、卵鞘を割ってみると、ぎっしりとカマキリタマゴカツオブシムシの蛹の殻が詰まっていました。

カマキリタマゴカツオブシムシの蛹の殻が詰まったオオカマキリの卵鞘

カマキリタマゴカツオブシムシの蛹の殻が詰まったオオカマキリの卵鞘

カマキリタマゴカツオブシムシの蛹の殻

カマキリタマゴカツオブシムシの蛹の殻

中はぎっしり詰まっていても、カマキリの卵鞘の外側の形は崩さないようにすることにより、カマキリが自分の子のために作った安全な空間を利用しながらカマキリタマゴカツオブシムシの幼虫は成長します。

カマキリタマゴカツオブシムシの雌雄

カマキリタマゴカツオブシムシは、触覚の形を見れば簡単に雌雄を判断することができます。歩行中は小さくて動きも早いため、なかなか触覚を観察するのは難しいです。しかし、裏返すとしばらくじっとしているので、触覚の形を確認することは比較的容易です。

カマキリタマゴカツオブシムシ

触覚を出しながら歩くカマキリタマゴカツオブシムシのメス

カマキリタマゴカツオブシムシ

触覚を出しながら歩くカマキリタマゴカツオブシムシのオス

カマキリタマゴカツオブシムシ

カマキリタマゴカツオブシムシの雌雄の腹面。左がメス、右がオス。

廃材利用もできるカマキリカマキリタマゴカツオブシムシ

ハラビロカマキリの卵

ハラビロカマキリの卵

カマキリタマゴカツオブシムシが利用するカマキリの仲間は、日本では秋の終わりのワンシーズンのみ卵を生みますが、カマキリタマゴカツオブシムシは年2回卵を生むシーズンがあります。もちろん1回はカマキリの産卵シーズンである秋ですが、もう1回は5月から8月頃の春から夏にかけて生みます。どこに卵を生むのかというと、これまたカマキリの卵です。なんとカマキリタマゴカツオブシムシは、カマキリの幼虫が脱出したあとのカマキリの卵鞘のみでも成虫まで成長することができます。ただ、一つのカマキリの卵鞘から成虫となって出てくるカマキリタマゴカツオブシムシの数は、卵入りの卵鞘で育ったものに比べると少ないとのことです。

Reference:
Iwasaki T., Aoyagi M., Dodo Y., and Ishii M. 1994. Emergence Periods of Overwintering Generation from Mantis Egg Case and Oviposition, and Longevity of Adult Dermestid Beetle, Thaumaglossa rufocapillata. Japanese journal of applied entomology and zoology 38: 147–151. doi:10.1303/jjaez.38.147. [in Japanese].