2026年2月12日

市民×専門家で外来生物対策!アプリ投稿が支える、生態系保全

アプリBiome(バイオーム)の投稿データを活用した最新の共同研究から、市民参加型の調査(市民科学)が外来種モニタリングに非常に有効であることが発表されました。

外来生物の早期発見の重要性

外来種の中でも、元々の地域の生態系や環境、さらには人間の経済活動にも大きな影響を及ぼす恐れのある種を、特に「侵略的外来種」といいます。

中には繁殖力や再生力が非常に強い種もあり、被害を最小限に抑えるためには、外来種が特定の地域に定着、広がってしまう前の 「早期発見・早期防除」 が重要です。

早期発見に必要なこと

外来種の早期発見・早期防除のためには、専門家による従来の調査だけでは、調査できる範囲や頻度にどうしても限界があり、刻々と変化する分布状況を十分に追いきれないことが課題となっています。

こうした背景から近年では、博物館や研究機関が蓄積してきた 「専門家データ」 に加え、市民の皆さんと一緒に協力して調査を行う「市民科学データ」 を活用する動きが広がっています。例えばバイオームでは、アプリBiomeを活用し、自治体と協力して下記の対策を行いました。

  • 神戸市:特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」の早期発見
  • 千葉県:外来水生植物「ナガエツルノゲイトウ」の最新分布を把握し、早期対策へ

研究概要

本研究では、2023年に国立環境研究所が公開した「侵入生物データベース(2025年3月現在)」に登録されていなかった都道府県レベルの分布情報について、「専門家データ」と「スマホアプリのデータ」の2つが、どの程度それを補完できるのかを検証しました。

  • 対象種:植物145種、昆虫38種
  • 比較したデータソース
    • 専門家データ:博物館の標本記録や研究機関による調査データ(GBIFで公開されているもの)
    • スマホアプリデータ:BiomeおよびiNaturalistへの投稿データ。Biome投稿データは、野生個体であるか確認し、専門家が種を同定したうえで研究に用いました。

例えば、ニワウルシでは、既知の侵入範囲(灰色)に対し、専門家データ・スマホアプリデータの双方で新たに侵入が確認された都府県(緑)が多くみられたとともに、専門家データのみ(青色)あるいはスマホアプリデータのみ(黄色)で侵入が報告された県がありました。

ヒロヘリアオイラガでは、既知の侵入範囲が西日本や太平洋岸に限られていたのに対し、実際には北陸・東北地方まで侵入していることが、主にスマホアプリデータから明らかになりました。 

このように、多くの種でこれまでに把握されていた分布を上回る情報が確認されました。具体的には、対象となる侵略的外来種のうち、植物145種中の106種、昆虫では38種中の16種で新たな分布が判明。これらの種では、1種あたり平均して約4都道府県で、これまで確認できていなかった分布が追加されたことになります。

都道府県レベルでの各種の新発見の内訳を調べたところ、植物では専門家データのみによる新発見が約半数を占めていました。一方、昆虫では新発見のおよそ8割がスマホアプリデータのみによるものでした。

さらに論文のデータをもとに、アプリBiomeのみから報告された新発見を調査しました。その結果、アプリBiome独自の新発見は、植物46種・昆虫16種について、計40都道府県という広範囲から報告されていることがわかりました。このデータから、Biomeユーザーの日々の投稿が、外来生物の分布拡大を捉える貴重なデータのひとつとなっていることが分かります。

次に、専門家データ・スマホアプリデータそれぞれの強みを把握するため、生物の特性と新発見の量がどのように関係しているのか、それぞれのデータ群で調べました。その結果、スマホアプリデータでは、昆虫では体が大きい種、植物では樹木よりも草本で、生息が多く報告されていました。一方で専門家データでは、体の大きさや樹木や草かといった特性にあまり左右されず、比較的均一に分布を捉えていました。

外来種対策における「ハイブリッド戦略」の重要性

これらの結果は、市民科学データと専門家データが、それぞれ異なる強みを持っていることを示しています。

スマホアプリによるデータは、目につきやすい昆虫や草本植物の最新の分布を、広い範囲から素早く集める点に優れています。一方、専門家によるデータは、種の見分けが難しいいきものや、普段の生活の中では見過ごされがちな種も含め、信頼性の高い情報を体系的に提供する役割を果たしていると言えるでしょう。

今後の外来種対策では、こうした双方の特性を活かし、市民科学データと専門家データを組み合わせた戦略をとることで、より精度の高いモニタリング体制を構築できることがデータで示されました。

結びに。

日々の観察記録は、その瞬間にしか残せない情報です。
何気ない投稿であっても、背景情報と組み合わせることで、外来種の分布拡大や生態系変化を捉える手がかりになることがあります。

本研究は、市民科学データと専門家データを組み合わせることで、より精度の高いモニタリングが可能になることを示しました。

Biomeは、誰もが参加できるいきもの観察の場として、今後も研究や保全活動との接点を共有していきます。


元論文
Sakai et al. (2024)
Harnessing community science and open research-based data to track distributions of invasive species in Japan
Conservation Science and Practice
https://doi.org/10.1111/csp2.70204
本研究は、香港浸会大学、国立環境研究所、株式会社バイオームによる共同研究です。