無計画に伐採された熱帯雨林
ボルネオ島の熱帯林はひどくいびつな状況にある。
荒れ果てた場所があるかと思えば、すぐ隣に原生林が広がっていることもある。
無計画な伐採による結果だ。
そうした様々な荒れ具合の森林に40mほどの調査区を設置し、その中に生えている全ての樹木の大きさと樹種名を記録していくのが調査の目的だ。
ボルネオ中の森林にそうした調査区をこれまでに300箇所以上設置してきた。
藤木はこのデータを用いて生物多様性を定量化するアルゴリズムの開発に成功し、その成果で博士号を取得した。
ボルネオ中の様々な場所を調査する中で、ひときわ衝撃を受けたのは、360度地平線まで皆伐され尽くした熱帯林の跡地だった。
原生林をよく知る藤木には、本来そこが野生生物の天国だったであろうことが容易に想像できた。
と同時に、同じ地球上で生きているひとりの人間として、申し訳ない気持ちになった。
この光景が今も藤木の心の原風景となっている。
地球の未来は危ういのではないかと肌で感じた瞬間だった。
下の地図は、ボルネオ島周辺の森林の状況を表しており、地図の赤くなっている部分は2000年以降に森林が消滅した場所を意味している。
たかだか20年弱でこれほどの面積の森林を伐採したというのだから驚きだ。
現在、白亜紀に起こった恐竜の絶滅と同等の大量絶滅が起こり始めていると多くの生物学者の間で考えられている(ex. Barnosky, A. D. et al.2011)。
こうした生物の絶滅は、生活インフラとしての地球システムを崩壊させることは間違いない。
経済的損失は少なく見積もっても450兆円/年になると言われている(国連環境計画2010)。