環境保全は人類の利益
こうした背景の中で、環境への配慮とその証明は、現代の行政・企業にとっては避けられない課題になってきている。
しかし、実は環境(特に生物多様性)の統一された評価方法は全くと言っていいほど確立されておらず (Fujiki et al.,2016,2017)、行政・企業・様々な団体が手探りで環境保全に取り組んでいるというのが現状だ。
大きな原因の一つは「生物分布データ」の不足だと藤木は考えている。
あらゆる情報がインターネットに溢れているこの時代においても、生物の情報は驚くほど少なく、一体どの生物が絶滅の危機にあるのか、どこにどんな生物が生息しているのか、といった基本的なことさえよくわかっていないのだ。
藤木は博士号取得後、世界的な生物・環境のデータベースを創ることを目指して株式会社バイオームを設立した。
環境保全のためのビジネスプラットフォームをつくることで環境問題解決のための支援ができると考えたからだ。
環境は破壊され、利用されることでお金になり、誰かの生活を支えている。
それは当然の営みで、決して批判されるものではない。
しかし、環境は破壊されることでしか利益にならないわけではなく、保全されることもまた、長い目で見れば人類の利益になるのである。
ただ現在、その利益を直接的にお金に換える仕組みはほとんどなく、環境の保全を大きく遅らせているのが実状である。
藤木は、環境の保全が直接的に人々の利益につながる仕組みをつくることこそが何より大切だと考えている。
そこで環境保全をビジネスとして成り立たせる試みとして藤木が取り組んだのが、世界中の生物の情報をビッグデータ化する事業である。
特に現在は、生物の名前を自動で判別できる独自の技術を応用して、生きものコレクションアプリを開発している。
このアプリは、生きものを見つけて図鑑にコレクションしていくアプリであり、様々な生物が身近にいることの価値を全ての人に感じてもらえるものになると考えている。
まだまだ課題は山積みではあるが、環境の保全を“社会の当然”にするべく、株式会社バイオームは事業に取り組んでいる。
【株式会社バイオーム】
設 立:2017年5月31日
所在地:京都市下京区中堂寺南町134番地
事業内容:生物情報プラットフォーム、生物情報アプリ開発運営
株式会社バイオームは、生物多様性をキーワードとして、位置情報システムや画像解析技術を応用したデータ解析サービス事業と、ユーザーが出会った“いきもの”を集めて世界を冒険するコレクションアプリ事業を展開。
1988年7月生まれ。大阪府立天王寺高校出身。2012年3月京都大学農学部卒業。2017年3月京都大学大学院博士号(農学)取得。2017年5月(株)バイオーム設立、代表取締役就任。
熱帯ボルネオ島にて2年以上キャンプ生活をしながら、衛星画像解析を用いた生物多様性定量化技術を開発。2017年3月京都大学大学院博士号(農学)取得、同年5月(株)バイオーム設立、代表取締役に就任。生物多様性の保全が人々の利益につながる社会をつくることを目指し、世界中の生物の情報をビッグデータ化する事業に取り組む。現在は生物の名前を自動で判別できる独自の技術を用いて、生物コレクションアプリを開発中。